営業職が将来なくなるって本当? 生き残るための方法とは?

AIの技術が進歩して営業職がなくなると聞いて、不安に感じていませんか? これから営業の仕事をしたい方にとっても無関係ではない問題です。 

ただ、本当に営業職はなくなるのでしょうか?

筆者もダスキンの営業職で働いてきた経験や、独立して自分の力で仕事をとり続けている経験がありますが、これから生き残るためには営業のスキルが必要と感じています。

この記事では、

  • 営業職がなくなるといわれている理由
  • 営業職がなくなる可能性が高い分野
  • 営業職として生き残るために身につけるスキル

などについて解説します。

お客さまから評価された営業のやり方についても解説します。どうすれば生き残れるのかも理解できるようになるので、ぜひ参考にしてみてくださいね!

1.営業職が将来なくなるって本当?

ここ数年AIと呼ばれる人工知能の発達により、将来的に営業職がなくなるといわれるようになりました。

ただほんとうに営業職はなくなるのか信じがたいかもしれません。そこでAIの発達にともない、営業職の人数や営業のやり方に影響があったのか見ていきましょう!

1-1.営業職の仕事はここ数年減り続けている

総務省が発表した「労働力調査」によれば、営業職の人数は2001年の968万人をピークに、2020年現在では848万人まで減少しています。

▼営業職の人数の推移

(引用元:労動力調査長期時系列データ|総務省統計局をもとに筆者作成

20年間で100万人以上減っていることを考えれば、今後も営業職の人数が減る可能性は十分に考えられるでしょう。

1-2.コロナウィルスの影響で営業のありかた自体が問われている

加えて営業職の減少に拍車をかけつつあるのが、2020年に世界中で発生した新型コロナウィルス(以下「コロナ」という。)の存在です。

実はコロナの影響で、これまで主流だった対面での営業が減少しています。

エン・ジャパン株式会社が運営する人事のミカタが374社に対しておこなった調査では、65%がオンライン商談を導入したことがわかりました。

◆人事のミカタの調査の概要
・65%がオンライン商談を導入
・IT・インターネット(92%)、広告・出版・マスコミ(85%)コンサル(83%)の順に多い
・2020年3月以降に導入した企業が82%
参考:300社に聞く!「オンライン商談」実態調査|エン・ジャパン

特にITや広告・出版・マスコミ業界では、オンライン商談の普及率の高さが目立ちます。導入した企業のなかには、取引先から要望されたので導入した企業もありました。

オンラインでの営業が本格的になれば、これまでよりも少ない労力と人員で営業をかけられるかもしれません。

さらにコロナにより業績が落ち込む企業が増えるなか、営業職をはじめとした従業員の大量リストラが増えることも考えられます。

このような背景もあり、仕事を失う営業職が多くなる可能性は十分にあるでしょう。

2.営業職がなくなると言われている理由

以前から営業職がなくなるといわれている理由は、2つあります。

◆営業職がなくなるといわれている2つの理由
1.消費者の行動心理が変わった
2.AIが進化し続け営業職の仕事を代わりにおこなう

順番にくわしく見ていきましょう。

2-1.消費者の行動心理が変わった

営業職がなくなるといわれている理由の1つは、消費者の行動心理が変わったことです。

▼消費者の行動心理の変化

時代消費者の考え方ライバルの多さ
昭和時代大量生産・大量消費少ない
平成以降消費者が自由に欲しいものを選べる多い

日本は、第2次世界大戦が終わってから、人口が増え続けていました。

そのときは大量にものを生産しても売れる状態だったため、営業のスキルが足りなくても定年まで雇用されたのです。

ところが人口の増加が止まり、インターネットも登場しました。

▼インターネットが営業職に与えた影響

そのため営業職にも、以下のような影響がありました。

◆インターネットが営業職に与えた影響
・商品を買う場所が広がったため、消費者も自由に買うお店を選べるようになった
・誰でもかんたんに商品の情報や口コミが手に入るようになった
・インターネットで商品を販売できるため、ライバル企業が急増し、営業しにくくなった

インターネットの誕生により、消費者の行動心理が大きく変わりました。したがって、これまでのように、訪問してきた営業マンの話を聞かなくてもよくなったのです。

たとえば、銀行の営業マンを例に解説しましょう。

▼金融商品を買う場合の情報源の変化

以前なら、金融商品の情報源や商品を買う店舗は限られていました。そのため銀行の営業マンの方が情報を多く持っており、有利な条件で販売ができたのです。

ところがインターネットの普及により、世界中の銀行や専門家などからも情報を得られるようになりました。

消費者は、販売する金融商品の特徴や口コミなどもインターネットでかんたんに集められるようになり、複数の候補から自分が本当に欲しい商品を買えるようになったのです。

また多くの会社が、インターネットで売ることに力を入れるようになり、営業マンがいなくても販売できる時代になりました。

そのような背景もあり、人件費を削るために従業員の採用を減らす企業も多くなっているのです。

2-2.AIが進化し続け営業職の仕事を代わりにおこなう

AIが進化し続ければ、営業職の仕事を代わりにおこなうのでは? といわれています。実際に営業マンがおこなってきた業務の一部を、AIが受けもつケースも増えてきました。

◆企業がAIの導入をした事例や人員を削減した例
・第一生命が新人の営業担当者の保障プラン作成をAIがサポート
・証券会社が消費者の疑問の受付にチャットボットを導入
・富士通が2020年に営業職を廃止

ただし2021年現在では、AIが営業マンの業務をすべて代わりにおこなった事例はありません。

総務省がおこなった「令和元年通信利用動向調査」でも、AIのシステムを導入している企業は14%にとどまっています。

(引用元:令和元年通信利用動向調査|総務省

このような背景もあるため、AIの発達ですぐに営業職がなくなる状況になるまでには、まだ時間が残されているといえるでしょう。

3.営業職がなくなる可能性が高い分野

営業職がなくなるとしても、すべての営業職がなくなるとは限りません。ただ以下の分野については、今後AIが取って代わるでしょう。

◆営業職がなくなる可能性が高い分野
・御用聞き営業
・営業職の事務作業
・インターネットで代用できる商品の営業

そのため、これまでと同じ営業スタイルが通用しなくなるかもしれません。

3-1.御用聞き営業

御用聞きとは、お客さまから注文された商品のみをただ販売する方法です。

もしあなたの営業が御用聞きであれば、職を失います。

なぜなら人を雇うコストをかけなくても、インターネット上でかんたんに商品を販売できるからです。

また御用聞きでは、お客さまとコミュニケーションがあまり取れないため、本当に抱えている悩みや要望を聞き出せないでしょう。

お客さまの立場から考えれば、誰から買っても一緒になるので、他社の商品に乗り換えることもできます。

筆者もダスキンのルート営業をしたときに、決められた件数を回ることを優先してしまい、お客さまと積極的にコミュニケーションが取れなかった時期があります。

その結果、信頼関係ができる前に他社の商品に乗り換えられたこともありました。

一方で、一緒に働いていた別部門の先輩の行動は違っていました。

その先輩はお客さまから頼まれた箇所の清掃を終えると、積極的にお客さまの期待に応えるべく提案をしていたのです。

◆先輩がおこなっていた提案
・照明の上ぶたにたまったほこり掃除
・トイレに加えて近くにある洗面台の清掃
・床のワックスがけに加えて窓のコーティング

これらの提案はお客さまが気づいていなかったニーズです。

1回の注文で数万円いただく水回りや床清掃と比べれば料金はわずかですが、お客さまの評価も高くなり、継続的に注文を受けるようになったそうです。

3-2.営業職の事務作業

営業職の仕事は取引先で営業をするだけではなく、以下のような作業もおこないます。

  • 報告書や請求書の作成
  • 提案する資料の作成
  • お客さまへの連絡

そのため営業のスキルがたりなくても、事務作業のできる人は重宝されます。

ところが事務作業のほとんどは単純な作業が多いため、人件費のかからないAIに任せた方がコストを削減できます。

今後、事務のスキルがあっても良い成績を残せない営業職は、選別される可能性が高いでしょう。

3-3.インターネットで代用できる商品の営業

インターネットの誕生は、新しい商品を生み出しただけでなく、すでにあるサービスの営業スタイルも変えてしまいました。

たとえば、新聞を販売する従業員です。

▼新聞を販売する従業員の数の推移

(引用元:日本新聞協会の新聞販売所従業員数、販売所数をもとに筆者作成

日本新聞協会の統計では、新聞販売所の従業員は2001年に約46万人もいました。ところが約20年後の2019年には、従業員数が30万人を切っています。

新聞販売所の従業員が減ったのは、インターネットの発達により新聞の需要が減ってしまったことが要因の1つです。

各新聞社はこれまでの販売所も残しつつ、インターネットでも新聞を見られるようにしたり、ニュースで積極的に配信したりしています。

このようにインターネットでも代用できる営業職は、今後なくなる可能性があります。ただ、インターネットの発達=すべての営業職がなくなるわけではありません。

インターネットで買うことに不安を覚えやすい商品を販売する営業職は、今後もなくならないでしょう。

筆者も靴や服などを買うときは、以下の理由からお店で買います。

  • サイズ選びを失敗しそう
  • すそ上げをしてほしい

また高価な家電を買いたい場合は「ネットの情報が信頼できない」「製品の使い方がわからない」などの理由で、量販店の従業員から話を聞きたいと考える人も少なくありません。

4.将来も生き残れる営業職とは?

将来も生き残れる営業職には特徴があります。

◆将来も生き残れる営業職
・AIにはないコミュニケーション能力がある
・新たな企画を考える力に長けている

具体的にどのような特徴があるのか解説しますね!

4-1.AIにはないコミュニケーション能力を持っている

AIはお客さまの年齢や質問への回答から傾向をつかみ、提案する能力はあります。

一方で人間は、お客さまの本当の感情に訴えかけたり、営業マンの印象で商品を買ってもらったりすることができます。

お客さまは単純に、商品の魅力だけで買うかどうか決めるわけではありません。なんとなくの感情やこの営業マンが好きだからという理由で商品を買うこともあるのです。

実は筆者も、商品の魅力以外の理由で商品を買ったことがあります。

高校生のころに自宅に学習教材の営業マンが来ました。話を聞いているなかで商品に興味はありましたが、決め手は営業マンが信頼できそうと感じたからです。

営業マンは話ベタな感じでしたが、おだやかな方で憎めないような印象を受けたので「この営業マンは良い人そうだから信用はできそう」という印象を持ちました。

結局、営業マンの印象が決め手で親に買ってもらうように頼みました。

このように、商品をいますぐに買いたい人だけがお客さまとは限りません。お客さまの不安を聞き出しながら解決策を提示することで、買いたいという意欲を引き出せるのです。

4-2.新たな企画を考える力にたけている

AIはすでにあるものを考える力にはたけていますが、新しい企画を考える力はまだありません。

たとえば、コロナの影響で大打撃を受けたのがホテル業界です。AIでもすでに取引のあるお客さまに宿泊をうながしたり、外国人の対応をしたりできます。

ただ、ぬくもりのある提案やリモートワークで安く宿泊できるプランの提供など新しい企画を考えるのは難しいでしょう。

そのため、お客さまのニーズを満たす新たな企画を考える力にたけている営業職は、AIが発達しても生き残れる可能性が高くなります。

4-3.一人ひとりのお客さまに合わせた細かい提案ができる

AIは年齢や性別などの情報をもとに買いたい商品を予測して提案することができます。しかし、一人ひとりの要望に細かく応える能力はまだありません。

一方で人間は、会話のなかで以下のような思考ができるので、よりお客さまの要望にそった提案ができます。

◆人間だからこそ可能な考え方
・お客さまの本当の悩みは●●では?
・もう少し値下げをしてほしいのかも
・対応はおだやかだけれど、実は忙しくて長話ができないようだ

人間が営業をすれば、お客さまが抱えている本当の悩みに気づくだけでなく、悩みを解決する細かい提案ができるのです。

4-4.AIを補助ツールとして駆使できる

営業職がすぐになくなるとは限りません。ただ営業の活動をしているとき、AIが役立つ場面は増えるのではないでしょうか?

◆AIが役立つ主な場面
・新規のお客さまのリストアップ
・契約書類の作成
・お客さまとのやり取りについての指導

今後はAIの使い方が日々の成果に直結します。たとえばAIを利用すれば、取引先に訪問する前にお客さまの情報や傾向を手に入れられます。

ただAIの情報を見てもうまく活用できなければ、成果を出すのは難しいでしょう。

大事なのは、得られた情報をもとにどのような提案ができるかという視点です。

たとえば住宅販売の営業職で、AIのお客さま情報から30代男性で妻と子どもの3人暮らし、将来的に2世帯で親と住みたいという情報を得られたとしましょう。

これらの情報を得たときには、子どもや年配の両親が安心して暮らせる地域や安全面に配慮した住宅の提案ができれば、成約率が上がるかもしれません。

一方で、周りが繁華街で治安に不安がある地域や改築を想定していない家を提案すれば、成約率が下がる可能性があります。

このようにAIから得た情報をうまく使いこなさなければ、営業職として生き残るのが難しくなるのです。

5.営業職として生き残るために身につけるスキルとは?

営業職に限らず、景気の影響やAIの発達で仕事がなくなる可能性は頭に入れておきましょう。営業職として生き残るためには以下のスキルが必要です。

  • ヒアリング力
  • 提案力

順番にみていきましょう。

5-1.ヒアリング力

営業職としてまず身につけたいスキルは、ヒアリング力です。成果を出せるかどうかは、限られた時間でお客さまの情報や要望をどのぐらい聞きだせるかにかかっています。

AIでも家族構成やお客さまの思考についての情報は得られます。ただ、気づいてなかったり隠していたりする悩みはわかりません。

◆お客さまから情報を得るためにできること
・お客さまから信頼してもらえるように会話を進める
・なぜ商品に興味を持ったのか考える
・お客さまの表情や対応を観察する

とはいえ、最初から心を開いてペラペラ話してくれるお客さまはほとんどいないでしょう。そのため、お客さまから信頼を得られるような対応を心がける必要があります。

身だしなみの清潔さやお客さまに寄り添うように話を聞けば、買う決断をうながすきっかけになるかもしれません。

他方でAIから商品を買う場合は、どうしても一方的な提案になりがちです。その結果、お客さまを逃してしまうかもしれません。

したがってヒアリング力があれば、今後も生き残れる可能性は高くなります。

5-2.提案力

営業職は情報を得るだけでは契約はまとまりません。お客さまから聞いた悩みやニーズに合った提案をしなければならないのです。

筆者は現在、フリーランスとしてライターをしていますが、提案力はとても重要と考えています。

フリーランスである以上、自分の仕事は自分でとらなければ生活していけないのですが、文章力だけでは食べていけないことに気づきました。

仕事の提案をするときに、お客さまが持っている悩みやニーズを予測し、要望にそった提案をしなければ契約できないのです。

そのため筆者は、取引したい相手に仕事の提案をするとき、以下のことを心がけています。

◆筆者が営業するときに伝えること
・お客さまの悩みを解決できるためにこころがけていること
・どのような流れで仕事をおこなうのか
・実績の提示

これらの情報を伝えれば、どのような流れで仕事をおこない、どのような成果物が仕上がるのかのイメージをもってもらいやすくなります。

その結果、ライターの仕事を開始した当初と3年が経過した現在では、応募文に対する反応に大きな差が出ています。

▼応募文の反応についての比較

時期仕事をはじめた当初3年が経過した現在
返信が届く割合10%〜20%前後70%前後
受注率50%前後70%前後

ライターとして仕事を開始した当初、応募しても返信される割合は10%〜20%前後でした。

しかし仕事を開始してから3年が経過した現在では、約7割の相手から返信をいただけるようになり、そのうちの半分ぐらいの方と契約しています。

このように提案力は、営業職として生き残るために必須のスキルです。したがってヒアリングと提案のスキルは、常に鍛えるようにしてはどうでしょうか?

なお売れる営業マンになるためには、いくつか押さえるべき心得があります。

6.営業職はなくならないが、スキルは高めるべき

すでにAIの発達により、営業職の仕事の一部はなくなりつつあります。ただ、営業職の仕事のすべてがなくなるとは限りません。

AIではまだできないヒアリングやお客さまからじかに聞き取った悩みや要望をもとにした提案をすれば、今後も営業職として生き残れる可能性は高いでしょう。

とはいえコロナの影響で、対面での営業をひかえざるを得ない状況は続くかもしれません。

さまざまな情勢に対応できるように、自分のスキルを高めることをおこたらないようにしましょう。

そうすれば営業職の仕事を辞めることになっても、スキルを活かせるので困ることはありません。