即決営業はクロージングが命! 即決につなげる6つのコツ

即決営業とは、商談やプレゼンをしたその場でイエスの返事を引き出す営業のかたち。持ち帰って考えてもらう時間をとることなく、すぐにクロージング(結論をだす)をするスタイルです。

営業活動は、相手と会う約束をして訪問をし、商談のあとに検討してもらって、後日に返答をもらう……。そんな流れが一般的なイメージだと思います。しかし、そんな検討の期間をすっ飛ばしてその場ですぐにクロージングするのが即決営業なのです。

即決営業は数ある営業スタイルの中でも、もっとも効率の良いスタイルで、優秀な営業マンは少なからずこのテクニックを持っています。

「でも即決営業って押しが強くていやがられそう」「その場でクロージングしてもあとでクレームやキャンセルになるのが怖い」そう思ってなかなか実践できないという方も多いと思います。でも、即決営業は決して押し売りではなく、準備と手順にもとづいたクロージングの技術なんです。今回の記事ではそんな即決営業のメリットやクロージングのコツをご紹介します。

今回は特別に、筆者の経験談もお伝えしたいと思います。マスコミ業界で10年以上の営業経験を持つ筆者が思わずうなった、「ほんとうにすごい即決営業のクロージング」を受けた経験です。

即決営業のクロージング術を身につけることができれば、営業マンとして成長できること間違いなし!

即決営業のメリットとは?

即決営業とは、商談や売り込みにいったその場で契約をとる営業スタイルや営業トークのこと。相手に、「じゃあ検討してあとで返事をしますね」ではなく、その場で返答(できればイエス)を言わせる営業スタイルです。

まずは、営業経験10年以上の私も感じている、即決営業の大きなメリットを2点ご紹介します。

1-1.即決営業はクロージングの成功率が上がる

商談している相手がその商品を買うかどうかもっとも真剣に考えている瞬間は商談中です。「前向きに検討します」と言ったところで、商談を終えて時間が経てばたつほど買いたいという気持ちは下がっていきます。「鉄は熱いうちに打て」というとおり、商品に関心をもっていて買ってくれるかもしれないお客さまに、関心が高いうちに結論をもらうことで、受注率をアップさせることができるのです。

即決営業は相手に考える時間を多く与えないこともポイント。その場で買うか買わないかの返事を出さずにいったん商談を終わらせたあとに時間をかけて考えると、そのあいだに誰かに相談して反対される、もっと安い商品を探されるなどの可能性があります。時間があればあるほど「契約しない理由」は増えてしまうのです。

1-2.即決営業は営業の効率が上がる

その場で買うか買わないかの返事をもらえなければ、そのあと追いかけて連絡を入れたり、場合によってはもう一度お客様のもとを訪れて商談するなど、結論までに手間ひまがかかってしまいます。

即決営業によりその場でクロージングを成功させるができれば、1件のお客さまにかける時間を大きく短縮でき、その分たくさんのお客さまを担当することができるでしょう。

営業の効率を上げることは買ってくれそうなお客さまを増やし、売上アップにつながります。

即決営業に必要なクロージングの6つのコツ

即決営業は決して押し売りではなく、手順とルールにもとづいたクロージングの技術です。ここでは即決営業を実現するためのクロージングのコツを、商談の流れにあわせて6つご紹介します。

2-1.商談の目的を明確にして共有する

まず、今日この場は商談や提案の場であること、商品が良ければ、内容に納得すればここで契約してほしいということを言葉にして伝え、「契約する」という目的を明確にします。

「ごあいさつだけ」「紹介だけ」と言って商談を始めるパターンがよくあります。しかしこれだと、お客さまは「今日は話を聞くだけ」と最初に決めてしまい、商談の最後に結論を出す必要があると考えてくれません。

「商品が気に入ったら今日契約してくださいね」など、この商談のゴールを明らかにしておきましょう。

2-2.未来をイメージしてもらいワクワクさせる

商品の提案では、商品の機能や性能の紹介も必要ですが、それ以上に大切なことがあります。それはお客さまがその商品を手に入れることによってどんなメリットがあり、お客さまの生活や人生がどのように変わるのかを具体的にイメージしてもらうことです。商品の機能や性能は営業マンがいなくても、パンフレットを読めばわかります。商品そのものではなく、イメージした素敵な未来を手に入れたい! と共感を得ることがもっとも大切です。

たとえば車の営業なら「この車なら荷物がたくさん乗るので、家族でキャンプに行くときも大活躍! 夏はテントを積みっぱなしにして毎週キャンプに行くのも楽しいですね」と。マンションの営業なら「この立地は駅チカで、スーパーや保育園も近くてとっても便利ですよ。同じようなファミリー世帯がたくさん住んでいるのでお子さんに友達もたくさんできますよ」など。

自分も同じ商品を持っているが、こんなに楽しいという体験談なども説得力があるでしょう。

2-3.心配な点や検討事項を取りのぞく

いざ買うとなると「費用が見合うのか?」「本当に使いこなせるのか?」といった、心配な点が具体的にでてくると思います。

営業でお客さまと会話をする中で、お客さまの心配を先取りし、事例をいくつか挙げて「○○なので、その心配はありません」と、お客さまの不安をなくしていきます。この部分に関してはふだんの営業でのお客さまとの会話でも同じです。

2-4.限定感を演出する

数量限定や当日限定の割引、ほかに買いたい人がいて売り切れる可能性があるなど、「今決めたほうがお得」という限定感は最後の決定を後おししてくれます。

「本日契約していただいた人にだけ特典があります」「数量限定で残り1点となっています。この後もほかに買いたいとおっしゃる方と商談の予定があってそこで売れてしまう可能性があります」など「今」決めるメリットをしっかりと伝えることがポイントです。

2-5.結論は「買う」or「買わない」の2択にする

もっとも重要なのが、最後の決断をうながす場面です。ここで大切なのは「買う」のか「買わない」のかと2択で結論をもらうこと。今この場で断られるのをこわがって「検討してください」などと返事を先のばしにするのはNGです。そうしてしまうと、返事は「買う」「買わない」の2択ではなく、「買う(決める)」「買わない(決める)」「もう少し考えます(決めない)」の3択になってしまいます。

そうするとできるだけ楽な「もう少し考えます(今この場で決めない)」という選択に流れてしまう可能性があるのです。

金額が大きければ大きいほど、「決める」ことは勇気と労力を使います。とくに、急ぎや絶対に必要というものでないなら、「今この場」ですぐに決めるのは大変なことなのです。

2-6.断られる本当の理由を知る

もしも断られたら、もう一度ていねいにヒアリングをして断られた本当の理由を把握しましょう。そもそも結論を出す気がないのなら再度「2-1.即決営業は契約の成功率が上がる」「2-2.未来をイメージしてワクワクさせる」をていねいにおこなっていきます。

まだ解消できない不安や疑問があるなら「2-3.心配な点や検討事項を取りのぞく」に戻って不安の解消につとめましょう。「イエスと言わない本当の理由」を把握できない限り、契約につなげることは難しいでしょう。

即決営業でダメなクロージングの例2つ

何がなんでもその場で結論を出せばいいというものではありません。即決営業を目指すときについやってしまいがちな、ダメなクロージング例を2つご紹介します。

私も新人のころは、自信のなさからかついやってしまっていたダメな例です。クロージングでこんなことをやってしまうと、商品を買ってもらえる確率がぐっと下がってしまいます。

3-1.クロージングでお願いをして契約してもらう

「これでなんとかお願いします」という、いわゆるお願い営業はNG。営業とはあくまで、相手にとってメリットのあるものを紹介しているのであって、不要なものをお願いして買ってもらうわけではありません。このようなクロージングの方法は商品の価値を下げ、仮に契約につながったとしてもお客さまの満足度を下げてしまうおそれがあります。

「こんな素晴らしい商品は買ってして当たり前!」「契約できて良かったですね!」くらいの気持ちでかまえていましょう。

3-2.クロージングのときに余計なことを言う

断られるのをこわがって、断られたときのダメージをやわらげる余計なひと言を自分で言ってしまうパターン。お客さまが返事をする前に「やっぱり無理ですかね?」「安い金額じゃないのですぐに結論を出すのは難しいですよね」などと言ってしまう方がいますが、これは余計なひと言です。

せっかく買いたい気持ちが盛り上がっていても、こんな言葉を言われてしまっては気持ちが冷めてしまい、「やっぱりもう少し考えたほうがいいかも……」と再び考えるきっかけになってしまいます。

即決営業の注意点とデメリット

即決営業には注意点やデメリットもあります。それは決して押し売りをしてはいけないことです。「検討したい」という申し出に対し、かたくなに即決営業でクロージングをするのは得策とはいえません。

時間がたつほど成約率が落ちると説明しましたが、時間をかけて考えたうえで契約するという結論を出す方もいます。それを見極めずにその場での結論を強くせまってしまうと、せっかく契約の見込みがあったとしても断られてしまう可能性が高まるので注意しましょう。

また、強引に押し切られてその場では契約したけれど、後日、やはり納得がいかない、解約したいというトラブルも少なくありません。

相場よりも高いことに気づいた、思ってたサービスと違う、やっぱり解約をしたいなどクレームが発生する可能性があります。

お客さまはなぜ「検討します」とおっしゃるのか、その本当の意味を把握し、その内容によっては即決営業をあきらめて時間をかけることも必要です。

筆者が経験! 即決営業のクロージング具体例

ここでは、私が営業を受ける側として経験した即決営業のクロージング具体例をご紹介したいと思います。

私は営業マンとして10年以上、お客さまを相手に毎日クロージングを実践してきました。そんな私が「この即決営業のクロージングテクニックはほんとうにすごい!」と思わずうなってしまったクロージングテクニックです。

私が経験した即決営業のクロージング、それはヒルトン・グランド・バケーションズのタイムシェア・プログラムの営業です。タイムシェアとはコンドミニアムやホテルの1室を1週間単位で所有する権利を購入するというもの。所有権は不動産として登記され、相続や売却も可能です。知っている方も多いと思いますが、この営業はゴリゴリの即決営業としてかなり有名です。

営業トークとクロージングトークは上記で紹介した6つのコツがすべて取り入れられています。

1【ゴールの明確化】

商談は「気に入っていただければ今日この場で契約していってくださいね!」の明言から始まります。印鑑を持って来るように言われていますが、仮に持っていなくても、契約書はぼ印で作成できちゃいます。(アポイントの時点ですでに世帯年収による足切りがなされています。)

2【ワクワクの共有】

商談の大部分は美しいハワイの景色とそこで過ごすバケーションの楽しさを心ゆくまで味わうイメージムービー。タイムシェアを持つと人生がどんなに楽しくなるかという共感に時間と労力の8割を使っています。

じつは私、この営業を2回受けたことがあります。なんとなくですが、独身者には独身の営業マンを、子持ちの家族には家族がいる営業マンを、女性には女性営業マンをと、家族構成や特徴がお客さまと似ている営業担当をつけている気がします(たまたまでしょうか?)。

そして「私も所有していて、友人ときままな旅行に便利です」「自分が使わない年は両親に旅行をプレゼントできますよ」「毎年家族とハワイに行っています」などと、こちらがつい共感してしまうような会話を展開してきます。

3【不安点や検討点の取りのぞき】

残りの時間ではタイムシェアのシステムと価格の説明となり、ここで心配点や疑問点もきっちり解消していきます。「予約が取りにくそう→1年前から予約して、1ヵ月前までは無料で変更やキャンセルができる」「毎年は利用しない→隔年プランもある」「価格が高い→こちらの部屋はもう少し安い、購入した物件以外でも世界中のヒルトンホテルで利用できる」など。

ちなみに「商談には必ず夫婦そろって参加する」という条件があり、「妻(夫)に相談します」というお決まりの断り文句は最初からできないようにされています。

4【限定感の演出】

一般的に不動産物件は新築から時間が経てばたつほど「売れ残り」として価格が下がります。しかし、タイムシェアは残数が減るほど希少価値が高まり、価格が上がるというシステム。「今検討しているお部屋は時間がたつほど価格が上がります。どうせ買うなら、今この瞬間が一番安く買えるんです!」ということですね。

当日契約のみの大きな割引や成約特典としてポイントもつくので、今決めるとすぐに予約を入れられるという限定感も大きいです。

5【買うor買わないの二択】

すごいなと感じたのは、返答はイエスかノーしか求められないということ。「帰って、一晩考えます」と言うと、「契約いただけないということですね」と、資料さえくれませんでした!

「この商品は遊びであって人生に必要不可欠なものではありません。今は本当に検討するつもりでも、この場から一歩でも外に出た瞬間から『欲しい』という気持ちはどんどん冷め、買うという決定をくだすことはできなくなります。だから今決めることが重要なんです!」と明言していました。

6【真の理由を把握】

不動産商品ですので、多くの方の断り文句は「価格」になると思います。そうなると壁の向こうから上司が登場。「実はさきほど運よく1件だけキャンセルがあって、もう少し安いこの物件をご紹介できます! 残り1部屋なのでココで決めていただけないと次の方にご案内しますので。」とたたみかけてきます。

結局のところ契約はしなかったのですが、そのあとの電話や営業なども一切ありませんでした。

「話を聞くだけでヒルトンハワイに無料で宿泊できるチケットを必ずプレゼントします」という特典につられてアポイントをとる人が多いので、少なくともその場で即決するつもりで行っている人はほとんどいないと思います。しかし、このたくみなクロージングによって即決してしまう方も少なくないようです。営業トークの中では契約された方々の記念写真も見せてもらいました。みなさん、とってもステキな笑顔でしたよ。

思わず「今日このまま契約する人は多いのですか?」と営業マンに聞いてみたところ、当日の成約率は3割ほどだとか。不動産商品の即決率としてはかなり高いのではないでしょうか。

クロージングのコツを身につけ、即決営業で売り上げアップ!

即決営業は契約の成約率や営業の効率を上げて売上アップを目指す効果的な営業方法で、その実践にはクロージングのテクニックが重要です。決して押し売りではないですよ!

優秀な営業マンは少なからず即決営業のクロージングテクニックを実践しているもの。もちろん、通常の営業でも使えるコツばかりです。今回の記事でご紹介した6つのコツを身につけ、売上アップを目指しましょう。

執筆者:小山佐知子